【海外事例】スマホ用アプリ制作のために必要な戦略とは

Posted by 服部 丈 

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モバイルファーストという考え方では、コンテンツの選択や配置などスマートフォンへの最適化を考慮しなければなりません。今回のブログでは米・調査会社のAltimeterが発表した報告書「Make an App for that: Mobile Strategy for Retailers」からスマホ向けアプリを制作する際に注意すべき点を考えていきます。

以下、前述のレポートから「The Mobile Consumer Is Here」「Retaileres: Step Up Mobile Plans ToMeet Eager Buyers」の2つの章を抜粋しています。

 

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2011年、アメリカではスマートフォンやタブレット機器の利用者が増え、その勢いが-増した1年となった。これまでは自分になじみの無い商品を購入する前には、家で徹底的に情報を仕入れてから店舗を訪れることがほとんどだった。しかし、いまや状況はすっかり変わった。消費者は、その場で商品情報が手に入るモバイル機器を頼りに、ショッピングするようになった。

 

・2012年にはスマートフォン所有者が携帯電話利用者の半数を超えるだろう。タブレットについても注目度は変わらない。年平均成長率24%ほどで、市場の拡大が進む(※米国の場合)

 

・携帯電話ユーザーは1日におよそ1時間ほどをモバイルに費やす。その中でも携帯電話を利用したショッピングにかける時間は増えている。

 

 

モバイル機器は生活の、あらゆるフェーズで利用されている

 

 

Why mobile shoppers mean business now

モバイルに注力するにあたって従来のやり方を変えなければいけない理由は3つある。

 

・ユビキタス
2011年、われわれは初めてスマートフォンというものに対面した。安価で高速度の回線があることで実現した、デスクトップのPCとほとんど同様の作業ができる携帯端末だ。加えて、その端末の単価がどんどん下がったことで、多くのユーザーが所有することが可能になった背景もある。そのおかげでユーザーは、自由に手元のアプリを使って情報収集することができる。とくに実際の商品を目の前にしている店舗内で、それを行うことができるという部分に価値がある。

 

・ショッピングは「to doリスト」の上位に入ってくる
平均的なスマホ利用者は1日に1時間以上、携帯電話を利用している。そして、上位3割の活発なユーザーは、その時間の中でショッピングする。スマートフォン利用者は購入意欲が湧いた瞬間に、スマホを利用して行動に移すことができる。実際に店舗を訪れるよりも早く、商品そのものや、その価格についての情報にたどり着くことができるのだ。

 

・小売店のモバイル戦略は効果的ではない
インタビューした小売業者のほとんどは、同じ戦略を2,3度繰り返していた。かれらは汚名返上とばかりに、自分たちが望むような結果を得るべく、わずかな考えで自分たちの商品に合ったアプリを作った。いくつかのケースでは、失敗の原因はスマートフォンやテクノロジーに注力しすぎたことで、消費者側の問題や、モバイル機器の利用で解決できる問題ではなかった。一例を挙げると、ある小売業者はタブレットを指して「これはわれわれが考えるモバイル機器とは言えない」と話した。実際にはブランドにとってインタラクティブな活動をするために重要な役割を果たし、実際に消費者はタブレットを利用して商品を購入しているのだが。

 

 

Retailers: step up mobile plans to meet eager buyers

全米で約46%の成人が、オンラインでクリスマス向けのプレゼントを購入しようと考えている。これはかつてない数字だ。IBMコアメトリックスの統計によると、小売業者の全取引の内、約16%がモバイル機器を経由して実行された。これは前年に比べると、約2倍だ。そう、小売業者にとって、今が転換期なのだ。ステップアップし、その場で、そして店舗で必要になる情報が調達できるツールを提供しなければいけない時期が来たのだ。最近行われたshop.orgの調査では小売業者にとってモバイル戦略で「売上の減少を防ぐ」という項目は、リストの下に存在していることが明らかになっている。
ステップアップのために、小売業者は来店者に正しいツール、正しいプラットフォームを、正しいタイミングで供給する必要がある。そして、以下に挙げるような2つの失敗を犯さぬように気をつけないといけない。

 

1.
多くの企業は、ビジネスへの影響よりも、モバイルという手段そのものに焦点を当てすぎる傾向がある。その例がアバークロンビー&フィッチ(A&F)や、ロングホーン・ステーキハウスだ。この2つはデザインや、モバイルならではの技巧(3Dなど)にこだわっている。しかし、使いやすさやショッピングに集中するという部分では不具合が多い。たとえばA&Fはユーザーがお目当てにしている洋服そのものの写真がアプリのTOP画面になく、代わりにあるのはセクシーなモデルの画像だ。ロングホーンのアプリではステーキを焼くという疑似体験はできるが、レストランに行く手段については何もわからない。両者はともに、ターゲット客の要望を満たすことに失敗しているのだ。

 

アバークロンビー&フィッチとロングホーン・ステーキハウスのアプリ画面

 

2.
もう1つのよくある間違いは、モバイル利用者にターゲットを絞らないことだ。たとえばAmazonは2011年にキャンペーンを開始し、店舗の商品の値段をweb上でチェックできるアプリを提供した。これによってAmazonは、オンラインとオフラインを行き交う消費者顧客を通じて、様々な実店舗の価格設定とショッピングのデータを一挙に手にした。Amazonはアプリを介して、店舗でスキャンした商品について5ドルのディスカウントを提供し、オンラインの店舗へと誘導することに成功した。

 

モバイル戦略は手段に焦点を合わせてはならない。最終的な消費者のニーズに合わせるべきなのだ。携帯電話を利用してショッピングしたユーザーが、最近どんな不満を感じたのか。そして、パワフルで、どこでも利用可能、さらにセンサーを搭載した(スマートフォンという)機械が、そういった不満を解消することができるか、ということに焦点を合わせるのだ。

 

Amazonのアプリ紹介画面

 

How the mobile leaders are winning

ユーザーにどんな体験をしてもらおうと決断するかが、アプリケーションを作る上での戦略が成功するかどうかを左右する。様々な側面を持つビジネスを収れんさせていくことが肝心だ。とくに取引に重点を置く戦略においては。成功した小売業者から、何を学び取ることができるか?

 

・モバイル担当者と、他のカギを握るチームと提携させる
モバイル担当チームの成功は(存在する場合)マーケティング推進を担当する部署と、Eコマースを担当する部署と固く結びついている。たとえばStarbucksは金銭的な利益を付与するのでなく、商品購入を簡単にする仕組みを作ったアプリを開発して成功を収めている。彼らはユーザーの抱える問題(この場合は店舗での待ち時間)を解決することを狙ってアプリを制作し、結果として企業イメージをアップさせることに成功した。好評なこともあって、そのアプリはもうすぐ英国とカナダでリリースされる予定だ。

 

Adam Brotman, SVP & GM Digital Ventures, Starbucks
「どうやったら商品購入の過程を早く、簡単にできるか。さらに、列に並ぶ様子を変えず、それをシンプルな方法でやりたかった。最終的には、我々はソーシャル・チャンネル上で顧客が自分のブランドについて何を語っているのかに耳を傾け、消費が次に何を求めているか探っている」

 

Focus on what the user needs

モバイル戦略は全体を通して考えるべきで、ユーザーが何を求めているかについて重点を置くべきだ。情報関係のアプリについてはデザインがシンプルで「モバイル」だけでなく「情報」に関する問題を解決するソリッドな戦略である必要がある。たとえば、Best Buyは商品情報などがサードパーティのアプリによってばらまかれることが、店舗への誘導を増やす可能性があることを理解している。Best Buyは店舗や様々な商品に関する情報を共有するシステムのAPIを開発。そして、そのAPIを利用して商品の価格や、近隣地域で購入可能かという情報を公開している。その情報は他のショッピング向けのアプリが利用することも可能で、その結果として店舗へのトラフィックを増やしている。

 

Steve Bendit, Director of Emerging platforms,BestBuy
「すべての消費者が、われわれの商品情報を店舗で確認しているわけではないことはわかっている。来店者は他のチャンネルを使ったり、検索したり、他のコマース向けアプリを利用している。われわれは自分たちのAPIプラットフォームを立ち上げ「店舗の力が及ばない消費者行動」に対処することを早期から行っている。モバイルは、その延長線上にある。われわれはモバイルが自社APIの生み出す流れを加速させてくれると読んでいる」

 

Allocate the resources necessary to make mobile successful

資源の適切な配分は重要だ。薬局、そしてコンビニエンスストアのWalgreensは、それを前面に押し出している。彼らのアプリはライフスタイル部門で上位(ほとんどのアプリプラットフォームで小売はライフスタイル部門に属する)に位置する。それはカメラを使って事前にバーコードを読み込んでおくことで、ノベルティを手に入れることができるというものだ。数ある競合の中で最初に成功を収めることができた理由は、Walgreenが他のライバルが直面したトリッキーな技術的な問題点を解決することができたからだ。そして、それはリソースを費やしたからに他ならない。彼らはデザイン、開発、そしてテストを行うチームをiOSとアンドロイドそれぞれに準備した。ユーザーの抱える課題をノベルティという方法で解決するために。

 

Adam Kimec, Head of social media, Walgreens
「私はかつてチームの一員だったときに、こう言いました。『曲面に貼られたバーコードを読み込むアプリを作るのは非常にコストがかかる』。そして、われわれは他社に先駆けてアプリをリリースし、市場へと投入しました。われわれは2つのプラットフォーム(iOSとアンドロイド)でQAとテストのためのチームを組んだ。われわれが何かにコミットする時は、成功するために必要なすべてをつぎ込んでいく」

 

Mobile means multiple platforms

Zapposはタブレットとスマートフォン用にアプリを制作しただけでなく、モバイル向けのサイトも立ち上げた。すべてのプロセスは平行して進み、リリースへと進んだ。iTunes上で発見されやすいように、彼らはモバイルweb上での存在感とAPIのフレームワークを磨き上げた。現在、Zapposのアプリは14000以上のレビューがつき、ほぼ5つ星という高い評価を受けている。

 

Alex kirmse, Head of mobile,Zappos
「以前のZapposは、こんなデザインをしてきたことはなかった。毎週のようにプロセスを繰り返して、新しいものを作り上げた。チームは多くの時間を割き、誰もが12週間にわたって1週間に7日働いた」

 

 

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いかがでしたか。スマートフォンには、それに合った戦略があり、闇雲に動くだけでは効果がありません。知識を増やしつつ、自分の頭でしっかり考えていきたいですね。

 

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