マルチデバイス “Adaptation(対応)” vs “Optimization(最適化)”-Luke Wroblewski記事翻訳

Posted by 角谷 仁 

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”モバイルファースト”の第一人者、Luke Wroblewskiのブログから記事を翻訳してご紹介します。元記事:Multi-Device Adaptation vs. Optimization, June 25, 2012

 


 

Direct comparisons between multi-device design solutions for the Web often miss the point: each is better suited for particular things. Specifically, responsive Web design is an excellent solution for adapting to the capabilities of any given device. Server-side device detection solutions are great at optimizing for many of the same capabilities. There’s a reason for both techniques.

 

マルチデバイスのWebデザインソリューションを比較するとき、それぞれに向いていることがある、という点が議論されないことが多いです。レスポンシブウェブデザインは、どんなデバイスにも対応できるという素晴らしい特長があります。(PC/モバイルの専用サイトを作って)デバイスをサーバーで判定して振り分けする方法は、デバイスに最適化することができるという点で素晴らしい。それぞれの技術には、存在する理由があります。

 

この区別を理解することで、“Adaptation(対応)”と”Optimization(最適化)”のどちらが適切かを考える際に役に立つでしょう。

 

Adaptation(対応)

これからどこに向かっていくか正確にわからない場合、100%準備してそこに到着することは難しい。しかし、私たちはあらゆるシチュエーションに備えておくことはできます。

 

簡単な例として、旅先の天気がよくわからない場合にどんな準備をするかイメージしてみてください。おそらく少し寒くなったり、温かくなったりすることを考えて選択肢、つまり上着を用意しておくでしょう。そうすることで、旅行先に到着したときの実際の状況で上着を着たり、脱いだりできます。必要以上のものを準備したと言えますが、あなたはこの状況に”対応”できたことで快適にすごせます。

 

レスポンシブWebデザインはそれと似ています。“旅行”に備えて少しの余分なHTML,CSS,Javascriptを準備することで、これから登場するデバイスに簡単に対応できますし、ユーザーに適切な体験をさせることができます。レスポンシブWebデザインによる解決は、必要以上の余分なものを使うため、完全な最適化を意味するものではありませんが、いろんな未来に備えることができます。

 

Adaptation(対応)はWebでは本質的なことです。なぜなら、私たちは将来的にどんなデバイスがくるかわかりません。(大きい/小さい画面サイズ、マウス操作/タッチ操作、通信速度の速い/遅い、など。)レスポンシブWebデザインのような対応方法は、多くの不測事態に準備しておくことができます。

 

非常に有用ですね。

 

 

Opitimization(最適化)

一方で、これからどこに向かうかはっきりわかっているなら、事前に最適化することができます。つまり、必要なものだけを用意して持っていけばいいということです。

 

先ほどの旅行の話をします。もし晴れで暑いとわかっている地域に旅する場合、Tシャツとパンツのみを用意すればよいでしょう。不要な服がないので荷物は軽くなり、素早く行動ができます。これがOptimization(最適化)です。

 

これがWebだと、前もってデバイスのことがわかっているのであれば(大きい/小さい画面サイズ、マウス操作/タッチ操作、通信速度の速い/遅い、など)、異なるデバイスにも最適化できる、ということです。私たちのサーバーからデバイスへWebサイトのデータを送る前にデバイスの情報をわかっていれば、ユーザーには必要なデータだけを送れます。それがPCとモバイルでサイトを分けて作成し、ユーザーをサーバー側で振り分ける場合の本質です。自分が望むだけの最適化が可能です。

 

非常に価値がありますね。

 

 

なぜどちらも意味をなすのか

理想の世界では、私たちはどんな時でも、最適化の道を選ぶでしょう。サーバーからデータを送る前に送り先のデバイスのことは全て知っているでしょう。また、デバイスで正しく表示されているかを確認するために、際限ないリソースを持つでしょう。

 

しかし、ウェブは理想の世界ではありません。新しいデバイスが出現し、浮かんではすぐに消えていきます。また、サイトに来るいくつかのデバイスは、種類が特定できなかったり、間違って報告されたりします。なので悲しいことに、私たちは最適化の道をいつでも選べるわけではなく、その場合には、私たちはAdaptする準備が必要です。

 

最後にもう一度、旅行のたとえ話に戻ります。

もし旅行中はずっと晴れだと思ったとしても、一日くらいは雨が降るかもしれません。そうなると、Tシャツとパンツだけでは雨に濡れて悲惨になるか、ホテルに閉じこもって何もできなくなるでしょう。もし少しの上着を持っておけば、まだなんとかその辺りをうろついたり、たぶん楽しんだりできるでしょう。

 

これが、AdaptationとOptimizationがどちらも意味をなす理由です。レスポンシブWebデザインが必要なデータのみに最適化することができないから使えない、というのは間違った測定方法でレスポンシブWebデザインの有効性を判断してしまうことになります。同じように、PCとモバイルを分けて作成しサーバー側で振り分けを行う方法も、7インチのタブレットのランドスケープ/ポートレイトモードへの対応力で判断すると評価を間違える可能性があります。

 

これらの欠点は、両方の技術を否定するわけではありません。それぞれに、互いに持ち合わせていない長所があります。結果として、両方を組み合わせる、というのがとても面白いです。

 


 

角谷補足:著者の立場としては、ターゲットとすべきデバイスがある程度はっきりしているような場合にはデバイスに思い通りにユーザビリティを最適化できるという点で”Optimization=最適化”が良いとし、ターゲットとするデバイスがはっきりしないような場合、例えばかなり先のことを考える場合やできるだけ多くのデバイスにさせたい場合などは”Adaptation=対応”が良い、と言っているように思います。

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