多様に進化するスマホ 〜将来に向けて必要な視点〜
Posted by 服部 丈
コムスコア・ジャパンの発表によると日本では携帯電話利用者の4人に1人がスマホのユーザーと、普及のスピードが増してきています。それでは、どんなユーザーがスマホを利用しているのか。日本の現状や世界の事情から、今後を占っていこうと思います
ユーザーの傾向
現在、日本ではスマートフォンを利用しているユーザーの多くがアーリーアダプターと呼ばれている層です。多くの場合、PCと併用していますが、徐々に「スマホ・ネイティブ」となる若い年代も増加中。LINEはモバイルに特化して制作されましたが、その理由も「スマホならではのアプリでなければもうダメ」と考えたからだということを、NHN Japanの舛田氏がインタビューで言及しています。モバイルファーストという言葉通り、PCを頭に入れず本当にスマホへ特化したサイトやアプリの制作を考えなければいけません。
世界に目を向けると、また違った側面が見えてきます。アジアやアフリカといった地域では、意外なことにスマートフォンの普及率が高くなっています。原動力となっているのは日本のようなアーリーアダプター層ではなく、PCを持たない貧困層。「生活を一段豊かにするデバイス」としてでなく「本当の生活必需品」としてスマホを選択しています。低所得層がPCを持たず、スマートフォンだけを利用してWebへアクセスする傾向は先進国にも共通して見られます。comScore社の発表したデータによると、米国では「所得が25,000ドル以下」「定年退職後」といった項目に当てはまる、出費を抑えたい方がスマホを利用するようになっているようです。
ユーザーによって違う必要なサービス
日本のような「新しいモノ好き」なユーザーが多い場合は、ガジェットやゲームといったアプリが流行するのは自然な流れです。Webサイトの制作でも、使い手にある程度のリテラシーを期待できるケースも少なくありません。
一方、アジアやアフリカのようにスマホ=生活必需品という地域では事情が少し異なります。たとえばモバイルを使った送金システムについては、日本よりも優れたアプリやサービスが存在します。M-PESAは、その代表的な例。口座自体を持っている人口の割合が低く、少額のやり取りをするニーズが強い地域ならではの特徴と言えるのではないでしょうか。コンテンツについても日本のような精細さは必要ではありません。映画や遊園地といった娯楽に乏しい地域では、コンテンツのクオリティよりも、安い(もしくは無料)で楽しめるアミューズメントは貴重な存在です
PCとスマートフォンの違い
PCは実務をこなすためのツールとして利用されるケースが多く、ユーザー層や利用シーンがかなり固定化されています。
一方でスマートフォンに関しては「誰もがスマホを持つ」時代がやってくることが予想されます。ターゲット層を細分化し、どのようなシチュエーションでWebサイトを利用するかも精査しなければなりません。様々な事柄を考慮に入れなければ、ユーザーの姿を思い描くことはかなり難しくなります。
しかし、スマホの登場でチャンスが増えることは火を見るよりも明らかなことです。今までは時間や空間など、制限のある状況下でしか触れることのなかったWebの世界に、今では自由に、違和感なく接触することが可能。決済機能などデバイスの進化が進めば、インフラ化することも想像に難くありません。日本と世界、その違いを見定めつつ、新しい時代を切り開くようなサービスや、ユーザーとのコミュニケーションを考えていきましょう